秋のドッペルゲンガー

ジャンルがあるとしたら「日記」ではなく「雑記」になります。 ショートストーリーもいくつか書いています。

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Lost of Memory 2~第一印象

2007/10/30(火) 21:18:23

 昔読んだ小説だったか、あるいは映画だったか、こんな設定があったはずだ。

……主人公がどこか知らない場所で目を覚ますと記憶が失われている。
 そして、主人公は、自分ではまったく覚えていない不思議な力があることに徐々に気づいていき、また何かの事件に巻き込まれたり、ある人物と出会ったりして記憶を取り戻していく。
 記憶を取り戻すと、主人公はCIAの秘密エージェントで、大きな国際的陰謀を解決するために……。

 だいたいそんなストーリーだったと覚えている。

 ちょっと待てよ。
 これがいつ読んだ小説だかしらないが、俺はそのストーリーをきちんと覚えているじゃないか。
 全ての記憶が失われているわけでもないらしい。

 希望的観測だが、おそらく最近の……といっても数年程度の記憶だけが失われているのかもしれない。
 それならば……。
 俺は、幼稚園・小学校・中学校のこと、そして俺の両親のことを思い出そうとしていた。
 ダメだ。
 なにも思い出せない。
 俺の頭の中には、誰も登場しないし、なんの光景も浮かんでこなかった。

 さて、ミスターNobody、お前は充分ベッドの中で考えたはずだ。
 そろそろ何か行動をおこしてもいいころだろう。

 俺は、身を起こしてベッドの脇に立った。

 立ってみてわかったが、どうやら俺は、いわゆる中肉中背といった体格の男であることが分かった。
 フロアの冷たさが足に伝わってきた。
 どうやら今の季節は、少なくとも夏ではないことだけがわかった。

 もう一度、部屋の様子を見回してみた。
 家具調度類は少なく、そして広い部屋だった。
 一見して高級な建物の一室だということがわかる。

 書棚に近づいてみた。
 ほとんどがコンピュータプログラミングに関する専門書のようだ。
 その中の1冊を手に取り開いてみた。
 何がなんだか理解できない。
 しかし少なくとも書いている日本語は読むことができた。

 これで1歩前進した。
 俺は日本語を理解して、日本語で思考する人間……つまり有り体に言えば、「日本人」だっていうことだ。

 すると俺は、ミスターNobodyではなく「名無しの権兵衛」といった方がいいかもしれない。

 クローゼットを開けてみた。
 中には、背広数着と多くのネクタイが掛けられていた。
 どれも地味なものだったが、なかなか高級そうにも見える。
 これが俺の物だとしたら、少なくとも俺は普通の勤め人なのかもしれない。

 ……そして、クローゼットの扉には鏡が付けられていた。

 さて、俺との初のご対面だな。
 第一印象が大切だ。

 鏡の中の男は……。

 髪の毛は起きたばかりで寝癖がついているが短く刈り込まれていた。
 どちらかというと厳しい顔だった。
 鏡の中から俺を不思議そうに見つめる瞳には鋭さが感じられた。
 少なくとも、進んで友人とはしたくない男だ。
 年齢は30代後半、いや40代だろうか。

 試しに笑ってみた。
 鏡の中の男の表情が一変した。
 ほう、笑うと中々いい男じゃないか。
 そうか、お前さんは、どうやらモテるタイプなんじゃないか?
 
 鏡に向かって声を出してみた。
 「おい、名無しの権兵衛さんよ」
 自分で思っていたよりも太い声だった。
 まあ悪声でないことは確かだろう。

 とにかく鏡の中の男にまったく記憶がない。
 そう、初対面の男だった。
 俺は、自分の顔を忘れないように、もう一度、鏡の中にある顔をじっくりと観察し記憶することにした。

 俺は、パジャマを脱ぎ、クローゼットの下にある引き出しから下着やワイシャツを探しだし、そして一番高そうな造りのスーツを身にまとった。
 
 全てのものが俺の体にぴったりだった。
 ということは、これは俺のスーツなのだろうか?
 すると、ここは俺の部屋じゃないのか?

 スーツの襟の内側を見た。
 アルファベットで、
 Hashidume
と刺繍されていた。

 「ハシヅメ」か……。
 橋爪と書くのだろうか。
 とりあえず「名無しの権兵衛」よりは、マシだろう。
 これで、俺の名前は、「ハシヅメ権兵衛」に決まりだ。

 これで、また一歩前進した。
 
 そして、次の一歩は……。

 そう、、あの書棚の右側にあるドアを開けて、次の部屋に進むことだった。

(Lost of Memory ~初対面 了 つづく)
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コメント
ドッペルさん
あけましておめでとうございます。
昨年はおはなしを聞かせてくださってありがとうございました。
今年も楽しみにしていますのでよろしくお願いします。
このお話の続きは。。。まだかかりそうかしら。
首をなが~くしてお待ちしています。
URL|sara #-|2008/01/07(月) 03:26 [ 編集 ]
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空中ブランコ乗りのキキ(創作続編)

キキは、穏やかな海の上をゆっくりと羽ばたいていました。
 潮の香りがする空気をふたつの翼で包みながら前に進みます。  四回宙返りを成功したときのお客さんの拍手がまだキキの耳に残っています。  三回宙返りを成功させたときよりも、大きく、賞賛と喜び、そして驚きがこもっている拍手でした。  キキは、そのことにとても満足していました。
キキは、自分が白鳥になってしまったことを受け入れることができました。  賞賛と拍手をもらい、そして、世界の誰にもできない四回宙返りができたのですから。
   キキは、ロープも網もない大空で宙返りをしてみました。  三回、四回、そしてそれ以上何回転でも、いとも簡単に宙返りができました。
 それはそうです。
 白鳥になってしまったキキにはふたつの翼があるからです。
 大空でいくらキキが上手に宙返りをしても、誰からも拍手をもらえません。  それが少しだけ残念に思いました。
   キキは、ある日の夜、こっそりとサーカスの大テントに戻ってしまいました。  もう2度と戻らないと決心していたのに、どうしてもピエロのロロや団長に会いたかったのです。
 キキは、開けっ放しだった大テントの窓からこっそりと中に入っていきました。  もう夜でしたから、出し物は終わっていて、大テントの中は暗くてガランとしていました。  2回ほど羽ばたいて、あの空中ブランコの踏み板までやってきました。
 キキは、もういちど四回宙返りをやってみることにしました。  自分の力を試したかったのかもしれません。  だから、ふたつの翼を使うつもりはありませんでした。  そして、あのおばあさんからもらった、澄んだ青い水の入った小瓶もありませんでした。
 キキは、くちばしを使ってブランコにつかまりました。  そして、あの時と同じように、大きくブランコを振って、真っ暗な天井の奥へ向かって飛び出していました。   キキは翼を伸ばしました。でも羽ばたきはしません。
  一回転します。
  また花が開くように翼が伸びて、抱き抱えるようにつぼんで…二回転。今度は水から跳び上がるお魚のように跳ねて…三回転。  しかし、三回転半したところで、次のブランコまでは届かないことに気づきました。
   ブランコの下には網も張っていません。  白鳥になったキキですから、羽ばたけば固い地面に落ちることはありません。  でも、キキは、けっして羽ばたこうとはしませんでした。  まるで猟銃で撃たれてしまった鳥のように頭から落ちていきます。
 キキは、同じようにブランコから落ちて亡くなってしまったお父さんのことを思っていました。
   …お父さん、わたしはもうすぐ、そっちに行くから、待っていてね。
 そのときでした。  落ちていくキキの体を誰かがつかみました。  つかんだのは、キキと同じような白鳥でしたが、ずいぶんと年をとっているようです。  キキは、その白鳥のクチバシで体を優しくくわえられて、ふわりと着地することができました。
 …ありがとう。お父さん。
 キキには分かっていました。  あの年老いた白鳥がキキのお父さんだったことを。
 キキの足下には、一本の真っ白い羽が落ちていました。  キキは、その羽を拾いあげました。  それは年老いた白鳥の羽でした。
 不思議なことに、キキの体からは羽がなくなっています。  そう、すっかり人間の体に戻っていたのです。
 近くから大きな拍手が聞こえてきます。そして、ライトが一斉について大テントの中はとても明るくなりました。   ピエロのロロと、団長がキキの近くにいて笑顔で拍手をしています。  そしてふたりは、泣き笑いをしながらキキを抱きしめました。
 キキの目からも涙があふれてきました。   涙をぬぐいキキが入ってきた大テントの窓を見上げると、年老いた白鳥が、じっとキキの方を見ていました。
   その白鳥は、キキを力づけるかのように大きな鳴き声をあげると海の方へと飛んでいきました。  それいらい、誰もその年老いた白鳥を見ることがありませんでした。
 キキは、サーカスのブランコ乗りに戻りましたが、やはり三回宙返りがせいいっぱいで四回宙返りは、どうしてもできませんでした。
   でも、町の人々は、まるで翼が生えたようにいっそう華麗になったキキの演技に満足して、その姿をうっとりとして見ています。  注意深くキキの姿を見ると、白い羽の髪飾りを付けています。
 キキは、この町に、そしてこの大テントに戻ってきたのです。  
 空中ブランコ乗りのキキが戻ってきたことで、人々のどよめきが、潮鳴りのように町中を揺るがして、その古い港町をふたたび活気づけました。  人々はみんな思わず涙を流しながら、辺りにいる人々と、肩をたたき合い大きくて、賞賛と喜び、そして驚きがこもっている拍手が鳴りやむことはありませんでした。

あたしの風

あの男性(ひと)がやってきたのは2学期の途中、そうです、そろそろ秋の気配を感じる風が吹き始めるころでした。   教室の大きな窓から吹き込んできた風のようにあのひとはやってきました。
 転校生でした。
本当に冷たい風のようなひとでした。  でも、あたしには、その風がとても心地よかったのです。   お風呂に入った後、お散歩に出かけた時に感じる風のように。  クラブ活動を終えた帰り道に、あの丘の上で感じる風のように。  遠足で行った高原で、あたしの頬を一瞬なでる風のように。  あのひとは、遠く遠くから風と一緒にやってきました。  この田舎町よりも、ちょっと都会だったようです。  クラスメイトも、そしてあたしも、その風が教室内で吹くことにためらいがありました。
 だって、  その風は、香りが違ったからです。
 その風は、ぬくもりがなくて冷たかったからです。
 その風は、少し湿っていたからです。
 でも、
 あたしは、その風に優しさを感じていました。
 あたしは、その風に抱かれてみたいと思っていました。
 あたしは、その風を思い切り吸い込んであたしの中に入れてみたいと思っていました。
いつもは優しいあたしのクラスメイトも、その風が教室に流れ込むことを許しませんでした。
   なぜでしょうか。
やはり、
 その風は、香りが違ったからです。
 その風は、ぬくもりがなくて冷たかったからです。
 その風は、少し湿っていたからです。
 あのひとが連れてきた風は、そのうち、すっかり弱々しい風になってしまいました。
 もう風ではなくて、教室にある普通の空気に混ざってしまい、あの香りはなくなってしまいました。  クラスメイトも、馴染めなかった新しい風が吹かなくなって安心しているようでした。
    3年生になっても、あたしはあのひとと同じクラスになれました。  もう、あのひとには、あたしの好きな風を感じることができません。
そして、その日は、突然やってきました。  やっぱり、2学期の途中、そろそろ秋の気配を感じる風が吹き始めるころでした。   朝のホームルームの時間に、あのひとは教室の前に立って、みんなに別れの挨拶をしていました。  あのひとは、やってきた時とくらべると全然元気がなくて、まるで空気が抜けた風船のようにしぼんでしまったように感じました。  通り一遍のあいさつが終わりました。  その時、あたしは、あの心地よい風を肌に感じていました。  だから、あたしは立ち上がって、開けっ放しだった教室の大きな窓を急いで閉めました。
   この風は、絶対にこの教室から出したくありませんでした。
 だって、  あたしは、その風に優しさを感じていました。
 あたしは、その風に抱かれてみたいと思っていました。
 あたしは、その風を思い切り吸い込んであたしの中に入れてみたいと思っていました。
 あのひとは、そんなあたしの姿をちらっと見ると、大きなスポーツバッグを持って、ほとんど無表情で教室から出て行ってしまいました。
 あたしのことを、クラスメートが不思議そうに見ていましたけど、そんなことはかまいませんでした。  徐々に、あのひとの風が教室から消えていってしまいました。
 なぜだか説明はできないけれど、あたしは教室から出て、あのひとの後を追いかけました。  あのひとの姿はみえなくても、あのひとの後には、あの素敵な香りが残っていました。
 あのひとは、あの丘の上に立っていました。  そこには、強い風が吹いていて、あたしは今にも吹き飛ばされてしまいそうでした。   やっと、あのひとのそばにたどり着きました。  あのひとは、あたしに向かって言いました。  でも風が強くて、とぎれとぎれにしか聞こえてきません。
「ぼくの… 風はきみに… でも… ここから離れても… いつか…きみと… この風に気づいたら… いいかい?」
 あたしは、
「もちろんよ。あたしをあなたの風で包んでちょうだい。そして、一緒に連れていって。」
 こう言って、目を閉じました。  すると、風があたしの体をすっぽりと包んでいることに気がつきました。
 その時、
 あたしは、その風に優しさを感じていました。
 あたしは、その風にもっと長く抱かれてみたいと思っていました。
 あたしは、その風を思い切り吸い込んであたしの中に入れてみました。
 風がだんだん弱くなって、心地よい香りだけがあたしのそばに残っていました。  目を開いて見ると、あのひとはいなくて、丘の下、遠くの方で土埃が舞っているのが見えました。  それ以来、あのひとと連絡はとれていないし、どこにいるのかも分からなくなってしまいました。
 でも、あたしは時々、あの丘で風が吹くのを待っています。
 あのひとは、絶対にあたしを迎えに来てくれるはず。
 その時には、優しい風に抱かれて、そしてその風を思い切り吸い込んであたしの中に入れてみようと思っています。  あのひとは、それを許してくれるはずです。
   優しい風であたしを包んで、あなたの住む街に連れていって…。 

My Emotional Supports

好きな作品を集めてきました。

マイク・オールドフィールド初期の傑作
まだ見ぬ風景を見たい方へ
Incantations
Incantations

こんなコンサートはマイクにしかできません
まさしく尋常ではない盛り上がり
アート・イン・ヘヴン・コンサート ザ・ミレニアム・ベル-ライヴ・イン・ベルリン
アート・イン・ヘヴン・コンサート ザ・ミレニアム・ベル-ライヴ・イン・ベルリン

レムといえばこの作品
その世界に身を委ねてください
ソラリス
ソラリス

筒井作品としてはマニア度が問われるものです
筒井上級者?に薦めます
脱走と追跡のサンバ
脱走と追跡のサンバ

筒井康隆 七瀬シリーズ3部作
こちらはどなたでも楽しめます 1作読むごとに感動が増していきます 人間心理・家族心理への深い洞察
家族八景 七瀬ふたたび エディプスの恋人
家族八景
七瀬ふたたび
エディプスの恋人

ディックを読むと現実世界が急に危ういものになってしまいます
アンドロイドは電気羊の夢を見るか?
アンドロイドは電気羊の夢を見るか?

人生で必要なことはすべてここに書いています
毎日1ページでも読みたい本
7つの習慣―成功には原則があった!
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シベリウスのシンフォニー全集 第1番から第7番までのボックスセットです
母国のオーケストラによる演奏はシベリウスへの愛情が感じられます
Sibelius: Complete Symphonies; Violin Concerto; Finlandia
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