秋のドッペルゲンガー

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ブログ・ドッペル・ゲンガー

2006/08/15(火) 02:24:07

 2年近くもブログを続けているといろんなことがあるもんだ。
 どこの誰だか分からない、つまり一面識もない人とネット上でつながり合うってのはかなり不思議なもんだ。 

 俺は、くだらない小説もどきを書いているから、ずいぶんと所謂ネット作家と知り合うことができた。
 しかし、にほんブログ村 小説ブログへなんてランキングサイトに登録しているから、このブログが小説専門なんて勘違いしてしまう人が多いようだ。
 所詮、俺にとってのブログは、まさしく徒然なるままに雑文を書くものだと思っている。
 ところで徒然ってどんな意味なんだ?
 そんなことも分からないが、まあどうでもいいだろう。

 ブログ人口ってどれぐらいなんだろう?
 一時のブームは去ったようだが聞くところによると既に何百万人って数の人間が、友達付き合いから宇宙まで様々なテーマで記事を書いているらしい。
 このエネルギーたるや相当なもんだ。
 事実、有名企業も、このブログの力に目を付けているらしい。
 
 まあ、いままでの話はどうでもよくて、ここからが本題だ。

 ある日、俺がブログに書いたドッペル・ゲンガーという短編にこんなコメントが寄せられた。
   
【ゲンガー】
おい、おまえ、俺のアイデアを盗んだだろう。
いくら素人だからと言ってやっていいことと悪いことがあるんだからな!


 なんなんだ。こいつは?
 ゲンガーだなんてふざけている。
 俺のIDは、ドッペルだって言うのに。
 ドッペル・ゲンガーっていう短編は俺の作品の中では、まあまあ上手くできたものだった。
 
 俺は、ゲンガーと名乗る奴のブログを訪れてみた。
 なんだ、これは!
 筋は微妙に違っているが、アイデアからオチまで俺のものと一緒じゃないか。
 さては、この野郎が俺のアイデアをパクリやがったな。
 
 まあしかし、ドッペル・ゲンガーっていう現象を知っている奴だったら俺と同じようなアイデアを思いつくってこともあるはずだ。
 しかし、似すぎている。
 俺は、奴のブログにある他の記事を読んでみることにした。

 …なんなんだ、これは。
 小説以外の記事…たとえば株や投資の記事、映画の記事、ヨガの記事、おまけに個人的身上や悩み事なんかも…全て同じだ。
 いやまったく同じじゃないが、言わんとしていることはほぼ同じだった。

 これは悪質な野郎だ。
 何の目的があってこんなことを…。

 俺は奴のブログをもっとよく調べてみた。
 すると俺が書いた記事よりも日付が先になっているものもあったし、後のものもあった。
 投稿時間なんて、編集でいくらでも変えられるのでおそらく怪しまれないように適当な時間を後で入力したんだろう。

 まあこのゲンガーなんて奴には関わらない方がいいだろう。
 しかし、俺が盗作をしているなんて思われるのは御免被りたい。
 奴の意図はなんなんだろうか?
 まあ、現実世界にも訳がわからない奴がいるからネットにも変な奴がいるんだろう。

 なんとか奴の行動をとめて、然るべきところにでも訴えなければ。
 でも、どこに訴えればいいんだろう?JAROなのか特許庁だろうか。いや著作権だから…うーん、そもそも俺の小説に著作権なんてあるんだろうか?
 
 俺は、ブログ仲間に協力してもらってゲンガーって野郎が盗作しているっていう証拠をつかむことにした。
 方法は簡単だ。
 まず俺が、なんかの小説をブログにアップする。
 それから、仲間にゲンガーのブログをすぐにチェックしてもらう。
 そうすれば、いくら投稿時間が俺の記事より先になっていても奴が盗作していることがはっきりする。
 何人も証人がいれば、訴えるのは無理でも奴のブログを閉鎖させることぐらいはできるだろう。

 なんでもいいからブログにアップする小説を考えてみた。
 ふたつアイデアが浮かんだ。
 時男登場っていうお話と、地球がひっくりかえってしまうというくだらないさかあがりの夜っていうものだ。
 どっちもしょうもないお話だが、まあいいだろう。
 とりあえず、さかあがりの夜ってのを2回に分けてアップすることにした。

 俺は、ブログ仲間に連絡してから前編を書き上げた。
 10分くらいで書けただろうか。
 奴のブログに行ってみた。
 当然、俺と同じような記事はなかった。
 今頃、必死で俺の記事をコピーしてちょっとだけ筋を変えているところだろう。

 さて、後編だ。
 しまった!
 後編を書いているうちにストーリーの辻褄が合わなくなってしまった。
 すっかり先に進めなくなってしまった。
 仲間にはすぐにアップすると連絡している。
 ストーリーを修正して新たなオチを考えるのに小一時間かかってしまった。

 まあ、いいだろう。
 おっと、その前に奴のブログをのぞいてみるか。

 やはり、俺がさっき書いた前編が巧妙に盗作されてアップされている。
 バカな奴だ。
 こっちには何人も証人がいるとも知らずに…。

 あれっ、奴のエントリーリストにさかあがりの夜 完結編ってタイトルがあるぞ。

 俺は、そのリンクをクリックして読んでみた。
 
 …なぜなんだ?
 俺がこれから完成させようとしている完結編と同じじゃないか。
 俺は、まだそれをアップしていない。
 …ということは俺が奴と同じような内容をアップしたら、俺が盗作をしたことになってしまう。

 可能性としては、前編を読んだ奴が俺と同じような思考回路で完結編を創ったとも考えられる。
 それだけ俺の小説は単純ってことなんだろう。

 俺はあえて完結編をアップすることをやめ、もうひとつの「時男 登場」って短編をアップすることにした。
 これは一話完結だから先回りされる心配はない。

 俺はバチバチとでかい音をたてキーボードをたたきくだらない話を打ち込んでいった。
 その時、ブログ仲間からメールが入った。

>ゲンガーって野郎が、変な短編をアップしたよ!

 俺は、キーボードから手を離し、奴のブログを訪れた。

 …そこにはタイトルが「時男 登場」とあり、俺が今まさに打ち込んでいるものと内容もオチも一緒だった。

 一体、奴は何者なんだ。
 いや、それよりも俺こそ何者なんだろうか?

 _______________________

 自己レス
 こんなオハナシを最後まで読んでいただいた方、申し訳ありませんでした!
 ノリで書かせてもらいました;;
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コメント

面白い!星新一のショートショートを思わせると感じた人は私だけでは無いでしょうね。
星新一はネットが今のように一般的になる前に故人となってしまいましたが、
生きていれば・・・。でも・・・ドッペルさんは
ポスト星新一なんて言われ方をしたら不愉快に思うでしょうね?
だってドッペルさんはドッペルさん唯一人なんですから・・・。
いや、ゲンガーさんと二人で一人かな?
(⌒-⌒)ニコニコ
URL|桃 #Y5eC1Sls|2006/08/15(火) 09:32 [ 編集 ]
これもとっても面白いですね
感想がいっつも「面白いですね」ばかりでワンパターンなの、ごめんなさい。
 この短編に触発されて「短い文」を書きました。トラックバックさせていただきます。
URL|佐藤さえ #mppWPqFs|2006/08/15(火) 09:38 [ 編集 ]
ありがとうございます!
桃さん
そうですねえ。星さんは亡くなってしまったんですよね。そういえば豊田有恒さんっていうSF作家も。
一時期の日本SF創始者メンバーもかなり高齢になってきました。(当時のことは私くらいの歳じゃなきゃわかりませんよね)
星さんの作品は、確か小学6年生の時にはじめて買った文庫本で「ボッコちゃん」ていうものでした。星さんからSFに興味を持ちだしたのです。星さんは、よくエッセイで、「小説を生む苦しみ」を述べてました。あれだけ大量にアイデアストーリーを書く苦労は相当なものだったと思います。
星さんの、スマートでどこか東洋的無常観?のある雰囲気は好きでした。
「ポスト星新一」なんてとんでもない!
でも光栄です^^
読んでいただきありがとうございました。

さえさん
いやー、もう一言だけで結構ですよ。それでも面倒くさければ○△×でもいいくらい。
これは深夜3時ころに書き上げて、アップしようかどうかずいぶん悩みました。ちょっと変すぎないだろうかななんて思っていました。
それとTBもありがとうございました。

URL|ドッペル #-|2006/08/15(火) 17:37 [ 編集 ]
こんにちは!
まずは、思わず真剣にふむふむと、読み進んでしまいました。簡単に騙されるらんららです。面白かったです!本当に、ありそうだもん。でもあったら、すごい人間不信になりそう(^^;)
ところで、ランキング、すごいですね!嬉しいです!今日もポチポチ帰りますので、また、面白い話お願いします!
あ、そうですね、空中ブランコ乗りのキキのお話。原作だけまず、読ませてもらいました。
突き詰めれば突き詰めるほど重いお話で、できるのなら続編考えてみようかと想ってますが…でも、できないかも。
でも、書くなら自分の書いてからでないと、皆さんの読めない…。読みたい。ううーん。
悩みどころです。
では、また!
URL|らんらら #-|2006/08/16(水) 19:52 [ 編集 ]
らんららさん
 ここまでのことは本当にはないですけど、似たことってないですか?
 自分が書いた記事の内容が他の方にちょっとだけ影響(悪影響か?)を与えることとか、あるいは、偶然に同時期に同じような記事を書くこととか経験あります。
 さすがに創作だと、それはありませんけど私の書いているものは他の方の影響を多分に受けていて知らず知らずに模倣をしています。模倣イコール盗作じゃないんですけどね。
 
 ランキングの方は確かにびっくりするほど上位になっていますし、それが励みになるのでいまだにバナーを付けています。
 でも、そのシステムについては、すごく疑問があります。
ただ、一番の効用は、同じ趣味の方と知り合えることです。特にFC2に移ってからずいぶんと創作系ブロガーの方と知り合うことができました。つながるきっかけを作ってくれるので今後も参加していくつもりです。(他に良い小説サイトみたいのはご存知ですか?)

 キキの方は他の方の作品を読むのもひとつの方法だし、影響を受けないまま書くのもひとつの方法です。
 らんららさんには、あまり原作にとらわれない自由なキキを期待しています!(あっ、こうお願いすると余計難しくなってしまいますね)
URL|ドッペル #-|2006/08/16(水) 23:49 [ 編集 ]
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『ドッペル・ゲンガー』
 私、職場に一つ年上の同姓同名の人がいます。 2000人ほどの職員がいるので 機会もなく、お会いしたことは一度もないです。 「こんにちは、佐藤さえ様ですか?先日は○○ガソリンキャッシュカードを申し込みしていただきありがとうございます。」「え、私そういった
佐藤さえ の 暮らしのらくがき帖|2006/08/15(火) 09:42

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空中ブランコ乗りのキキ(創作続編)

キキは、穏やかな海の上をゆっくりと羽ばたいていました。
 潮の香りがする空気をふたつの翼で包みながら前に進みます。  四回宙返りを成功したときのお客さんの拍手がまだキキの耳に残っています。  三回宙返りを成功させたときよりも、大きく、賞賛と喜び、そして驚きがこもっている拍手でした。  キキは、そのことにとても満足していました。
キキは、自分が白鳥になってしまったことを受け入れることができました。  賞賛と拍手をもらい、そして、世界の誰にもできない四回宙返りができたのですから。
   キキは、ロープも網もない大空で宙返りをしてみました。  三回、四回、そしてそれ以上何回転でも、いとも簡単に宙返りができました。
 それはそうです。
 白鳥になってしまったキキにはふたつの翼があるからです。
 大空でいくらキキが上手に宙返りをしても、誰からも拍手をもらえません。  それが少しだけ残念に思いました。
   キキは、ある日の夜、こっそりとサーカスの大テントに戻ってしまいました。  もう2度と戻らないと決心していたのに、どうしてもピエロのロロや団長に会いたかったのです。
 キキは、開けっ放しだった大テントの窓からこっそりと中に入っていきました。  もう夜でしたから、出し物は終わっていて、大テントの中は暗くてガランとしていました。  2回ほど羽ばたいて、あの空中ブランコの踏み板までやってきました。
 キキは、もういちど四回宙返りをやってみることにしました。  自分の力を試したかったのかもしれません。  だから、ふたつの翼を使うつもりはありませんでした。  そして、あのおばあさんからもらった、澄んだ青い水の入った小瓶もありませんでした。
 キキは、くちばしを使ってブランコにつかまりました。  そして、あの時と同じように、大きくブランコを振って、真っ暗な天井の奥へ向かって飛び出していました。   キキは翼を伸ばしました。でも羽ばたきはしません。
  一回転します。
  また花が開くように翼が伸びて、抱き抱えるようにつぼんで…二回転。今度は水から跳び上がるお魚のように跳ねて…三回転。  しかし、三回転半したところで、次のブランコまでは届かないことに気づきました。
   ブランコの下には網も張っていません。  白鳥になったキキですから、羽ばたけば固い地面に落ちることはありません。  でも、キキは、けっして羽ばたこうとはしませんでした。  まるで猟銃で撃たれてしまった鳥のように頭から落ちていきます。
 キキは、同じようにブランコから落ちて亡くなってしまったお父さんのことを思っていました。
   …お父さん、わたしはもうすぐ、そっちに行くから、待っていてね。
 そのときでした。  落ちていくキキの体を誰かがつかみました。  つかんだのは、キキと同じような白鳥でしたが、ずいぶんと年をとっているようです。  キキは、その白鳥のクチバシで体を優しくくわえられて、ふわりと着地することができました。
 …ありがとう。お父さん。
 キキには分かっていました。  あの年老いた白鳥がキキのお父さんだったことを。
 キキの足下には、一本の真っ白い羽が落ちていました。  キキは、その羽を拾いあげました。  それは年老いた白鳥の羽でした。
 不思議なことに、キキの体からは羽がなくなっています。  そう、すっかり人間の体に戻っていたのです。
 近くから大きな拍手が聞こえてきます。そして、ライトが一斉について大テントの中はとても明るくなりました。   ピエロのロロと、団長がキキの近くにいて笑顔で拍手をしています。  そしてふたりは、泣き笑いをしながらキキを抱きしめました。
 キキの目からも涙があふれてきました。   涙をぬぐいキキが入ってきた大テントの窓を見上げると、年老いた白鳥が、じっとキキの方を見ていました。
   その白鳥は、キキを力づけるかのように大きな鳴き声をあげると海の方へと飛んでいきました。  それいらい、誰もその年老いた白鳥を見ることがありませんでした。
 キキは、サーカスのブランコ乗りに戻りましたが、やはり三回宙返りがせいいっぱいで四回宙返りは、どうしてもできませんでした。
   でも、町の人々は、まるで翼が生えたようにいっそう華麗になったキキの演技に満足して、その姿をうっとりとして見ています。  注意深くキキの姿を見ると、白い羽の髪飾りを付けています。
 キキは、この町に、そしてこの大テントに戻ってきたのです。  
 空中ブランコ乗りのキキが戻ってきたことで、人々のどよめきが、潮鳴りのように町中を揺るがして、その古い港町をふたたび活気づけました。  人々はみんな思わず涙を流しながら、辺りにいる人々と、肩をたたき合い大きくて、賞賛と喜び、そして驚きがこもっている拍手が鳴りやむことはありませんでした。

あたしの風

あの男性(ひと)がやってきたのは2学期の途中、そうです、そろそろ秋の気配を感じる風が吹き始めるころでした。   教室の大きな窓から吹き込んできた風のようにあのひとはやってきました。
 転校生でした。
本当に冷たい風のようなひとでした。  でも、あたしには、その風がとても心地よかったのです。   お風呂に入った後、お散歩に出かけた時に感じる風のように。  クラブ活動を終えた帰り道に、あの丘の上で感じる風のように。  遠足で行った高原で、あたしの頬を一瞬なでる風のように。  あのひとは、遠く遠くから風と一緒にやってきました。  この田舎町よりも、ちょっと都会だったようです。  クラスメイトも、そしてあたしも、その風が教室内で吹くことにためらいがありました。
 だって、  その風は、香りが違ったからです。
 その風は、ぬくもりがなくて冷たかったからです。
 その風は、少し湿っていたからです。
 でも、
 あたしは、その風に優しさを感じていました。
 あたしは、その風に抱かれてみたいと思っていました。
 あたしは、その風を思い切り吸い込んであたしの中に入れてみたいと思っていました。
いつもは優しいあたしのクラスメイトも、その風が教室に流れ込むことを許しませんでした。
   なぜでしょうか。
やはり、
 その風は、香りが違ったからです。
 その風は、ぬくもりがなくて冷たかったからです。
 その風は、少し湿っていたからです。
 あのひとが連れてきた風は、そのうち、すっかり弱々しい風になってしまいました。
 もう風ではなくて、教室にある普通の空気に混ざってしまい、あの香りはなくなってしまいました。  クラスメイトも、馴染めなかった新しい風が吹かなくなって安心しているようでした。
    3年生になっても、あたしはあのひとと同じクラスになれました。  もう、あのひとには、あたしの好きな風を感じることができません。
そして、その日は、突然やってきました。  やっぱり、2学期の途中、そろそろ秋の気配を感じる風が吹き始めるころでした。   朝のホームルームの時間に、あのひとは教室の前に立って、みんなに別れの挨拶をしていました。  あのひとは、やってきた時とくらべると全然元気がなくて、まるで空気が抜けた風船のようにしぼんでしまったように感じました。  通り一遍のあいさつが終わりました。  その時、あたしは、あの心地よい風を肌に感じていました。  だから、あたしは立ち上がって、開けっ放しだった教室の大きな窓を急いで閉めました。
   この風は、絶対にこの教室から出したくありませんでした。
 だって、  あたしは、その風に優しさを感じていました。
 あたしは、その風に抱かれてみたいと思っていました。
 あたしは、その風を思い切り吸い込んであたしの中に入れてみたいと思っていました。
 あのひとは、そんなあたしの姿をちらっと見ると、大きなスポーツバッグを持って、ほとんど無表情で教室から出て行ってしまいました。
 あたしのことを、クラスメートが不思議そうに見ていましたけど、そんなことはかまいませんでした。  徐々に、あのひとの風が教室から消えていってしまいました。
 なぜだか説明はできないけれど、あたしは教室から出て、あのひとの後を追いかけました。  あのひとの姿はみえなくても、あのひとの後には、あの素敵な香りが残っていました。
 あのひとは、あの丘の上に立っていました。  そこには、強い風が吹いていて、あたしは今にも吹き飛ばされてしまいそうでした。   やっと、あのひとのそばにたどり着きました。  あのひとは、あたしに向かって言いました。  でも風が強くて、とぎれとぎれにしか聞こえてきません。
「ぼくの… 風はきみに… でも… ここから離れても… いつか…きみと… この風に気づいたら… いいかい?」
 あたしは、
「もちろんよ。あたしをあなたの風で包んでちょうだい。そして、一緒に連れていって。」
 こう言って、目を閉じました。  すると、風があたしの体をすっぽりと包んでいることに気がつきました。
 その時、
 あたしは、その風に優しさを感じていました。
 あたしは、その風にもっと長く抱かれてみたいと思っていました。
 あたしは、その風を思い切り吸い込んであたしの中に入れてみました。
 風がだんだん弱くなって、心地よい香りだけがあたしのそばに残っていました。  目を開いて見ると、あのひとはいなくて、丘の下、遠くの方で土埃が舞っているのが見えました。  それ以来、あのひとと連絡はとれていないし、どこにいるのかも分からなくなってしまいました。
 でも、あたしは時々、あの丘で風が吹くのを待っています。
 あのひとは、絶対にあたしを迎えに来てくれるはず。
 その時には、優しい風に抱かれて、そしてその風を思い切り吸い込んであたしの中に入れてみようと思っています。  あのひとは、それを許してくれるはずです。
   優しい風であたしを包んで、あなたの住む街に連れていって…。 

My Emotional Supports

好きな作品を集めてきました。

マイク・オールドフィールド初期の傑作
まだ見ぬ風景を見たい方へ
Incantations
Incantations

こんなコンサートはマイクにしかできません
まさしく尋常ではない盛り上がり
アート・イン・ヘヴン・コンサート ザ・ミレニアム・ベル-ライヴ・イン・ベルリン
アート・イン・ヘヴン・コンサート ザ・ミレニアム・ベル-ライヴ・イン・ベルリン

レムといえばこの作品
その世界に身を委ねてください
ソラリス
ソラリス

筒井作品としてはマニア度が問われるものです
筒井上級者?に薦めます
脱走と追跡のサンバ
脱走と追跡のサンバ

筒井康隆 七瀬シリーズ3部作
こちらはどなたでも楽しめます 1作読むごとに感動が増していきます 人間心理・家族心理への深い洞察
家族八景 七瀬ふたたび エディプスの恋人
家族八景
七瀬ふたたび
エディプスの恋人

ディックを読むと現実世界が急に危ういものになってしまいます
アンドロイドは電気羊の夢を見るか?
アンドロイドは電気羊の夢を見るか?

人生で必要なことはすべてここに書いています
毎日1ページでも読みたい本
7つの習慣―成功には原則があった!
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シベリウスのシンフォニー全集 第1番から第7番までのボックスセットです
母国のオーケストラによる演奏はシベリウスへの愛情が感じられます
Sibelius: Complete Symphonies; Violin Concerto; Finlandia
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